
インタビューにご協力いただいた方

貴社が展開する事業の特徴を教えてください。
谷:兵庫県三田市に位置する有馬カンツリー倶楽部は、1960年の開場から60年以上の歴史を持つゴルフ場です。「心からゴルフを楽しんでいただくための、すべてを」をコンセプトに掲げ、常にプレーヤー視点でのサービスを提供し続けています。大阪・神戸・京都の主要三都市から車で1時間圏内、最寄りの神戸三田ICからは約10分という抜群のアクセスのため「都心型ゴルフ場」としても親しまれています。
コース設計家・保田与天氏が手掛けた18ホールは、100万平方メートルを超える広大な六甲山の丘陵地地形を巧みに活かしたレイアウトに加え、広いフェアウェイと大きなグリーンが特徴で、初心者から上級者まで幅広い層がゴルフの醍醐味を味わえる設計となっています。プレー環境のみならず、250ヤードのドライビングレンジやアプローチ・バンカー練習場など、関西屈指の充実した練習施設も完備しています。
レストランはオープン以来「完全自社運営」を貫き、すべての料理を仕込みから手作りしているのが自慢です。創業当時からの味を守る「ハヤシライス」や「ビーフカレー」は多くのファンに愛される名物メニューです。さらに、入浴施設でゆず湯など季節ごとのイベントを行ったり、クラブハウスでは特にプレー後の疲れを癒やすくつろぎの空間を提供することにも心がけています。
貴社でのPayn導入状況をお聞かせください。
谷:2024年の9月ごろに導入し、キャンセルポリシーの再告知やオペレーションの準備などを行った後、2025年1月から実際の請求を開始しました。今で約1年ほど使わせていただいています。
初めてPaynを知った際の印象はいかがでしたか?
谷:自社予約システムのサポートをお願いしている「ティータイム」の方へキャンセル問題について相談したところ、すぐにPaynを紹介してもらったのがきっかけでした。
それまではアナログな方法で請求していく手段しか頭になかったため、キャンセル料の請求についてそこまで深掘りして考えてこなかったんですが、Paynの方からお話しを聞いて、よくよく考えたら「キャンセルについてオンラインの仕組みを活用して回収することは考えたことがなかったな」と気づきました。「携帯電話のSMSやメールアドレスへメッセージを送り、住所があれば郵送でも請求書を送れる。それを自動化できれば、そりゃ成り立つ仕組みだな」と合点がいき、「すぐやります」と即答したことを覚えています。
Payn導入時には、どんなプロセスで社内に浸透させていきましたか?
谷本:私がまず簡単なPaynの導入レクチャーを受け、現場スタッフへその業務を落とし込んでいきました。操作が非常に簡単だったので、特に問題なくスムーズに進めることができましたね。 これまで20年以上キャンセル料を請求しない状態でやってきたので、当然社内から不安や反対の声もありましたが、「これは決定事項だから、とりあえずやってみよう」と雰囲気作りをしてスタートさせました。
「我々が考えるほど世間一般の方々は抵抗感を持っていなくて、我々が過剰に恐れていたんだな」と思っています。

ゴルフ場業界及び貴社において、キャンセル料の請求と回収はどんな状態でしたか?
谷:バブル期の売り手市場だった頃は、キャンセル料をしっかりいただいていました。しかし、今から20年以上前に状況が変わり、ほぼメンバーとその紹介のみで集客できていたところが、当社もセミパブリック化していく中で「今のやり方のままではやっていけない」となり、一度請求をやめる判断をしたままになっていました。
印象に残っているのが、コロナ禍の2020年ごろ、知り合いのゴルフ場経営者二人と会った時のことです。当時、コロナ禍はゴルフ場業界にむしろ追い風になった部分があり、今までゴルフをやっていなかった層もプレーするようになり、需要が高まっていました。二人ともそれぞれしっかりしたメンバーシップのゴルフ場を経営されていますが、一方は100%キャンセル料をしっかり回収しており、もう一方は請求はしていたものの「今後キャンセル料請求をやめようかと考えている」と相談してきました。その時に「今からやめたらだめです。これからの時世を考えると、取らない方向にいくということはない」と話していたんですよね。
航空業界やホテル業界からはかなり遅れる形でしたが、近年ゴルフ場業界にもやっと事前決済やダイナミックプライシングなどの概念が入ってきました。今後必ずこの「キャンセル料問題」の分野にもメスが入り、キャンセルポリシーとそれに合わせた適正な運用をする体制が必要になってきます。逆行するのではなく、この進化にしっかり追いついていかないと、ゴルフ場業界全体の進化が遅れ、他の業界からますます取り残される、という思いがありました。
しかし、私自身も実際には現場はなかなか人材確保も難しく、ただでさえ忙しいので、その手間を考えると、当日キャンセルや無断キャンセルがあっても十分に請求のアクションはできずにいたことにジレンマを感じていました。当日キャンセルの予約に対して「また次回来てくださいね」と伝えるのが精一杯だったのです。
その課題はPaynを導入したことでどのように変わりましたか?
谷:コロナ禍で全体の集客は増えたおかげで、メンバーの方もそれまで取れていた予約枠が取りにくくなり、その結果「またがけ予約」や「とりあえず予約」が増えてきました。その結果としてキャンセルも多く生まれてくる環境になってしまったのです。
そんな中、PGMさんが全社でキャンセル料請求を始めたことも業界内で大きな話題になっていましたし、リスタートを切るなら今だと思ったのが2024年秋ごろでした。
谷本:まず、今までほぼゼロだったキャンセル料が思った以上のペースで回収できていることが、数字の面での大きな変化です。
もうひとつ、現場の気持ちの面での変化も大きいです。今までは「もらわない」が当たり前でしたが、当然ゴルフ場の1枠を用意するのはゴルフ場にとってタダではありません。そのお客様を迎え、気持ちよくプレーしてもらうための準備、コース整備、スタッフ配置他、忙しい中でそれにかけたお金や時間、色々なものが無駄になってしまいます。当たり前のように当日キャンセルや無断キャンセルが発生しても何もできない状況に、スタッフとしても「もどかしい気持ち」があったことは間違いないです。今は、少なくとも何もせずに終えるのではなく、Paynのおかげでちゃんと請求すべきお客様には簡単に請求し切ることができるようになり、その成果も数字で可視化されるようになったことで、気持ちの整理がつきやすくなったのがもう一つのポジティブな変化です。
Paynを使ったからどうという問題ではなく、これまで数十年やってこなかった「キャンセル料請求」というアクションをすることで、一部のお客様からご意見をいただくことはあります。当社としてはお約束通り適正な請求をさせていただいていますが、稀にご納得いただけない方がいた場合は、私が代わって背景を含めてきちんとしたご説明をさせていただいています。ただ言えることは、そういったケースは一部であって、ほとんどの方は特に過剰な反応なく、普通にお支払いいただけています。これは、ゴルフ場業界以外ではすでにキャンセル料を払うことが一般的になっているので、「我々が考えるほど世間一般の方々は抵抗感を持っていなくて、我々が過剰に恐れていたんだな」と思っています。
また、キャンセルされる方はキャンセル料発生前に連絡をしていただける割合が増えたおかげで、キャンセルのピークタイムが前倒しになっている感覚があります。この部分も集客を考える上で大きなメリットだと感じていますね。
今はまずビジターの方への請求を行っていますが、今後はメンバーも含めて全員に請求する体制に進化していきたいと考えています。
時間はどんどん経過し物事は進んでいきますので、進化していかなければ生き残っていけない。

経営者である谷様と、現場の責任者である谷本様それぞれの視点から、ゴルフ場業界が今置かれている現状に対して、キャンセル料の請求と回収が当たり前になることは、どんな効果を生むと考えられますか?
谷: 今はまだゴルフ場業界全体でルールが曖昧で、キャンセル料請求も支払いも常識になりきっていませんが、今後ある程度当たり前になってくれば、今みたいに「ゴネればなんとかなる」「交渉すれば免除される」なんてことの余地はなくなると思います。
予約についても、事前にその「1枠の価値」がもっと明確に可視化されてくるはずです。例えば航空券やホテルのように、融通は効きにくいがその分割安な事前決済の早割プラン、柔軟に変更可能だが通常料金の現地決済プラン、そしてその中間のようなプランなどが、ゴルフ場予約にも当たり前にできるようになり、予約者自身が自分の都合にあったその「1枠のルール」も理解した上で予約するようになっていくでしょう。
今、キャンセル料請求が日本全国のゴルフ場で広がっているのは、事業者にとっても消費者にとっても、そういった未来の変化への良いきっかけだと思います。
谷本:キャンセルポリシーをきちんと運用し出したことで、明らかにビジターの方の予約精度が以前より上がっています。相対的に、どうしてもメンバーのキャンセルの多さが浮き彫りになってきました。
だからこそ、我々はその1枠の価値を高めつつ、しっかり伝えていくことをしていかなければいけないと思っています。ルールを今よりも明確にしてちゃんと伝えるだけでも効果はあると思いますし、Paynの運用を開始した時は「予約の絶対数が減るのでは?」というのが最大の懸念でしたが、実際には全くそんなことはなく、予約数は変わっていません。
谷:だいぶ昔の話ですが、私自身がこの業界に入ってきた時、客観的にみて「他業界と比べると遅れている業界だな」と感じました。旅行や宿泊業界と比べると10年から15年くらい遅れている感覚でしたね。予約サイトで在庫を埋めていくとか、そういった概念もホテル業界から遅れてやってきましたし、ゴルフ場予約も案の定そういう風に徐々にそれが常識になっていきましたよね。「右へならえ」的な感覚を持っている人が多い業界でもあるので、キャンセル料請求と回収が当たり前になるのも時間の問題だと思います。
また、ゴルフ場は基本的に田舎にありますから、人材不足の問題は常にあります。今後は更に省力化をしていきつつ、同時に売上を上げていかなければいけない。いつまでも何十年も前の常識ややり方のままではダメだと思います。時間はどんどん経過し物事は進んでいきますので、進化していかなければ生き残っていけない。
最後に、Paynの導入を検討している事業者へのメッセージをお願いします。
谷本: 最初は不安でしたが、いざ始めてみると、思ったより何も言わず払ってくれるお客様がほとんどでした。運用も、今のマンパワーでもそこまで大変ではないので十分に取り組めていますし、安定的なオペレーションができるようになりました。
谷:私はPaynでキャンセル料請求を改めてきちんとやってみて思うことが色々ありました。約160コースある兵庫県のゴルフ場と比較するとき、私は自社ゴルフコースについての自己評価をとても低く考えていました。ですが、ほとんどのゴルファーの方は「きちんと請求すれば、きちんと払ってくれる。予約も減っていない。」という事実があり、つまり当社のゴルフ場は「そんなに低く見積もられていないんじゃないか?」と考えるきっかけをくれました。
キャンセル問題を何とかしたいと思っていても一歩を踏み出せない経営者の方の中には、もしかすると私と同じで「うちがキャンセル料が取れるゴルフ場かどうか?」という点において、自己評価を低く見積もっている人もいるかもしれません。当社は、これをやったことで「お客様はそうは見ていなかった」という実感が持てました。
もう一つは、「そもそもキャンセル料自体をゴルフ場の価値評価に結びつける必要もなかったのかもしれない」と思い始めています。ゴルフ場によって1枠あたりのキャンセル料は5,000円〜10,000円と様々であっても、枠は枠です。その1枠がキャンセルされた時にいくらいただくべきかは、お客様ではなくゴルフ場側が決めることです。
予約は契約であり、事前決済予約の場合に事前に支払うことも、事前決済額から当然キャンセル料をいただくことも契約です。同様に現地決済の予約に対して、きちんと請求してお支払いいただくのも単なる契約です。ゴルフ場は事業者とお客様との間の信用・信頼あってのビジネスなので、そういった信頼を築いていく事を前提としてビジネスを進めていけば、支払うかどうかはゴルフ場の価値そのものとは関係ないのかもしれません。
枠を押さえるということの責任と約束。「もし使われないなら、なるべく早くに枠を返却いただき他の方に譲っていただく」というルールは当たり前のことです。我々もそうでしたが、キャンセル料を払ってくれない大元の原因は、事業者側がキャンセルポリシーやその運用が中途半端で、お客様に明確に伝えられていなかったことにあるのかもしれません。 きちんとしてやっていくなら今は最善のタイミングだと思います。


